詩集
2021松谷みよ子民話集

いのちの力になりたい 16 松谷みよ子 民話集

「いま、わたしたちは、小さな国の枠からぬけだして、
地球という単位でものを考えなくてはならなくなっている。
 だからこそ、日本に伝わる昔話に光を当て、
次の世代にしっかりと渡さなくてはならないし、
同時にそれは、世界の子どもへのおくりものにもしなければとねがう。
 わたしたち、大きなかぶのお話をもっているのよ。
わあ、わたしたちにはね、大きな大根のおはなしがある。
同じね、といったり、ちょっとちがうのね、といいあったりする。
 また大人たちは、人間が人間であるあかしかもしれないなあ、
昔話の共通性は。なんていいあったりする。」
   
  松谷みよ子さんの言葉より

生前、民話を採録し続けた松谷みよ子さんの言葉です。
小さな村のひとつの民話は、地球に深く根を張って
遠く離れた、思いがけない国の民話につながっています。
民話を、国の枠を超えた財産と考えた松谷さんは、昔話を次世代へ手渡し、
やがて世界の子どもへの贈り物にもなるように、と願いました。
厳しい生活のなかで、生々しい感情を露わにする民話の登場人物。
それでも聞く方は、ほっと心が安らぎます。それは
鳥や植物、見えないものの気配、楽しげな音をたてる自然の繊細さと大きさが、
ときに野卑であったり、悲嘆に暮れたり、情に溺れる、
人間くささのすべてを、受けとめてくれるからかもしれません。
やさしい昔話を、脈々と語り継ぐ思いには
多様でありながら、普遍的ないのちのありようを愛おしむ気持ちが流れています。
この変わらぬ愛を、いのちを守り、日々たいせつに寄り添い続ける
みなさまの深い想いに、わたしたちは感謝を持って捧げたいと思うのです。

2021.5月発行

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